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よく、日本の英語教育では英語が身につかない、何年も英語を勉強しているのに英語を苦手とする日本人は多い、と言われています。日本の英語教育はなぜ、英語が使える日本人を育てられないのでしょうか。日本の英語教育の現状や歴史、問題点や諸外国との比較、日本でも効果的に英語教育を受ける方法について解説します。
日本の英語教育の現状や歴史
まずは、日本の英語教育の現状や歴史についておさらいしましょう。
日本の英語教育の現状
文部科学省「小学校における英語教育の現状と課題」の「英語教育をめぐる状況」によれば、社会のさまざまな面でグローバル化が急速に進み、物流や情報だけでなく人や資本も国境を越えて活発な移動が行われる中、国際的共通語である英語でコミュニケーションがとれるようになることが必要不可欠である、と語られています。
さらに、世界では英語を母語とする国でなくても、公用語や準公用語としている国が多く、国際社会のコミュニケーションツールとして機能しています。しかし、日本におけるTOEFL® TESTの平均スコアはアジア諸国の中でも下から2番目と、非常に低い位置にあることがわかっており、日本人が国際社会で今後も生き抜いて行くためには、国家戦略として英語教育が重要な課題である、とも述べています。
TOEFL® TESTだけでなく、TOEIC®でも韓国や中国、台湾よりも低い値であり、世界最大級の語学学校EFが発表した2020年の最新ランキングでも日本の英語レベルは世界100カ国中55位であり、英語力は「低い:Low Proficiency」に分類されています。
このような現状を踏まえ、文部科学省は2020年度から大幅な教育改革を行いました。具体的には、英語を小学校から必修とし、3・4年生では「外国語活動」としてまずは英語に触れる体験を、5・6年生からは教科として「英語」の学習を始める、というものです。また、これまでの読み書き中心の学習から、聞き取りや会話などによる音声コミュニケーションを中心とした「英会話」教育に主眼を置いた教育になりました。
日本の英語教育の歴史
日本の英語教育が始まったのは、いわゆる黒船来航以降と言われています。それまでの江戸時代では鎖国を行っていたこともあり、必要なのは交易を行っていたオランダ語だけだったためです。しかし、黒船来航により近代化の必要性を悟った幕府やその後の明治政府では、アメリカやイギリスの文化を学ぶため、英語教育も必要だと考えました。
そこで、明治に入るとすでに中学や高校から英語が教科として課されましたが、明治時代、中学以上の学校に行けるのはエリートのみでした。大正になると国民教育が始まるのですが、その後、昭和に入ると世界情勢が悪化し、英米と日本は対立関係となったことから、英語は敵国の言葉であると見なされ、一度、教育過程から消えてしまうのです。
つまり、日本における英語教育の体制が本格的になったのは第二次世界大戦以降であり、アメリカ主導のもと英語教育が始まりました。これにより、戦前はイギリス英語が主流でしたが、戦後からはアメリカ英語が教えられるようになったのです。
また、当時の日本はアメリカを追従するような改良が必要と考えられており、同時に第二次産業の発達から「決められたことを決められた通りにこなせる労働者」が求められたことで、独創性よりも知識詰め込み型の教育が重視されました。このため、書いてあることを正確に読み取る「読み=Reading」と、海外と文書のやりとりをするための「書き=Writing」がメインの教育になってしまったのです。
日本の英語教育の問題点
では、日本の英語教育の現状の問題点について、4つのポイントを見ていきましょう。
受験目的になっている
日本では中・高・大と10年間勉強しても、英語をコミュニケーションツールとして使いこなすに至っていません。これは、高校受験や大学受験など、受験対策を中心とした偏った英語教育が原因と考えられています。どうしても「受験で使うから勉強する」という意識が先に立ち、文法や単語学習、読み書きばかりの受験対策を行うことに力を入れてしまうのです。
すると、実際の会話ではあまり使わないような堅苦しい英文ばかりを覚えてしまったり、受験での失敗を恐れて間違いを怖がるあまり、自ら英語を話したり書いたりするアウトプットが出来なくなってしまったりします。さらには、受験が終わると英語を使わなくなるといったような、言語をコミュニケーションツールとして使う本来の目的からどんどんズレていってしまうこともあるのです。
和訳や単語、文法の勉強ばかりしている
日本での英語教育は、和訳することや、単語や文法の勉強ばかりしていることも問題視されています。和訳したり、単語や文法の勉強をすることは、文章の意味を正確に理解しなければならないという意識の現れであり、決して悪いことではないのですが、会話の際にいちいち和訳していてはスムーズなコミュニケーションが行えません。
英語で会話を行う際には、いちいち和訳を挟まなくても英語のまま頭に入り、自分の考えを英語でそのまま伝えられれば良いのです。これは「英語脳」などと呼ばれることがあり、英語でスムーズに会話するためには必要不可欠な能力です。現状の日本の英語教育では、和訳して正確に意味を理解することばかりに囚われているがゆえ、書けるけれど話せないという人が多いのです。
つまり、総じて英語を実際にコミュニケーションツールとして「使う」ための訓練が全く行われていない、と言っても過言ではありません。文法や単語学習ばかりを行い、とにかく精読を目指すことは、翻訳者にとっては良いことかもしれませんが、コミュニケーションのために英語を「使う」という意味では妨げになってしまうことも多いのです。
音の訓練をしていない
日本で受ける英語教育には、音声でのインプット・アウトプットが少ないことが指摘されています。中学校や高校で音読はしていても、一人ひとりの発音をチェックしたり、指導したりされたことはないのではないでしょうか。これは、もちろん1クラス30人も40人もの人数を1人の教員が一つ一つ発音指導していられない、という学習指導要領の問題もありますが、そもそも発音が重視されていないという面もあります。
そのため、いわゆる「英語耳」が育たないのです。一説には、日本語の音は108音、英語の音は1808音とも言われています。例えば、よく取り上げられるのは「R」と「L」の発音の違いですが、日本語だけを聞いて育った人にその細かい違いを聞き分け、発音に生かすのは簡単なことではありません。
外国人からよく「日本人の英語は聞き取りにくい」と言われるのは、1000音以上もの異なる音を聞き分けられる耳を育て、発音出来る口を育てることが出来ていないからではないでしょうか。正しい発音を身につけられず、聞き取れないままカタカナ英語を話していても、英語でコミュニケーションをスムーズにとることは出来ないでしょう。
ネイティブや海外経験のある教員が少ない
英語教員に海外経験のある者が少ない、あるいはあっても非常に短いなどの要因により、そもそも英語力が高い教員が少ないというのも大きな問題の一つです。例えば、英検準1級レベルの英語力を持つ英語教師の数は年々増加傾向にあるものの、中学校ではまだまだ半数に満たない状態にあります。そのため、なかなか高いレベルの英語に触れる機会が少ないのです。
そこで、ネイティブスピーカーの助手として「外国語指導助手(ALT)」が導入されました。しかし、ALTを利用した授業時間数は小学校ほど多く、中学校、高等学校と学年が上がるにつれて下がってしまっています。ALTは子どもたちにとって最も身近なネイティブスピーカーと言えます。ALTと英語でコミュニケーションをとることにより、英語をコミュニケーションツールとして使うという本来の目的をより学びやすくなるのではないでしょうか。
参考:文部科学省「令和3年度「英語教育実施状況調査」概要」
今後の政府の方針
日本での英語教育の今後の政府の方針について、文部科学省の提言から解説します。
小・中・高を通じた指標の設定
小学校・中学校・高等学校それぞれでの指導改善は進んでいるものの、それぞれの学校間で連携が取れているとは言えず、それまでの学習内容を進学先で生かせていない状態です。そこで、小学校・中学校・高等学校を通じて各段階での学びを明確に英語の4技能ごとに「英語を使って何が出来るようになったか」という視点からの一貫した教育目標とすることで、学校間での連携を取りやすくします。
具体的には、小学校・中学校・高等学校でそれぞれ以下のように英語教育を改革していくことが示されています。
<小学校>
小学校3・4年から英語教育を始め、まずは英語の音声に慣れ親しませ、コミュニケーションの下地を築きます。5・6年では身近なことについての基本的な表現を、3・4年で培ってきた「聞く」「話す」に加えて「読む」「書く」の内容を加えることで、4技能をバランスよく学ばせます。これは、これまでの中学校での英語教育の単なる前倒しではなく、積極的に英語をコミュニケーションツールとして使おうとする態度を育成し、初歩的な英語の使い方を学ぶ、新しい英語教育の形です。
<中学校>
中学校では、まず小学校からの学びの連続性をはかり、身近な話題について理解したり表現したりするコミュニケーションをはかれるようにすることが急務です。これまでの文法や和訳に偏らないよう、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う学習が求められます。また、新学習指導要領で「原則として英語での授業」と書かれたように、英語で英語を教える「直接法」により、英語をよりコミュニケーションツールとして使う方法を身につけやすくなるでしょう。
<高等学校>
これも中学校からのスムーズな学びの連続性をはかりながら、さらに国際社会の多様性に対応した目標や内容を設定し、幅広い話題について自分の意見を英語で発表・討論・交渉出来るよう、コミュニケーションをさらに高度化していくことが求められます。中学校・高等学校ではいずれも現在の文法や語彙中心の英語教育を脱却、コミュニケーション中心の学習へと変化させること、情報や考えなどを正しく理解したり、適切に伝えたりしなくてはなりません。
学校の指導や評価を改善
学校教育における指導方法や評価は、これまで受験用の英語ばかりが学習されてきたように、読み書きを中心とし間違いを許さない精読が求められてきました。しかし、テストの点数ばかりを気にしたり、失敗を恐れてコミュニケーションがとれないなどの事態は改善されなければなりません。つまり、全く新しい指導や評価方法が求められるのです。
そこで、学習指導要領はふまえながらも、読む・書く・聞く・話すの4技能に関して「英語を用いて何が出来るようになるか」という観点から学習到達目標(CAN-DO形式)を設定し、指導・評価方法を改善する努力が行われています。例えば、面接・スピーチ・エッセイなどのパフォーマンス評価などを活用すれば、積極的に言語をコミュニケーションツールとして用いることへの評価につながります。
高校・大学入試での英語の扱いを変える
高校入試や大学入試における英語力の評価は、4技能を使った総合的なコミュニケーション能力がきちんと評価されるような試験にすべきだ、と考えられています。民間の資格・検定試験を活用するなども含め、各大学の入学者受入方針などとも整合性をはかりながら、指針づくりを進めていかなくてはなりません。
教材の充実
これまでの中学校や高等学校の教科書は、文法を中心とした言語の材料を定着させるための学習、すなわち前述のような和訳や精読を目的とした教科書になってしまっていました。そのため、言語材料は活用しながらも、説明や発表、討論などのコミュニケーション活動を通じて、思考力・判断力・表現力などを育成するような教科書の作成が求められます。
また、小学校中学年では、新たに発達段階に応じた教材を開発するとともに、小学校高学年では中学年での学びを引き継ぎながら、アルファベット文字を読めるようにしたり、日本語と英語の音声・語順の違いを学んだりと、中学校へ続く学習に必要な教科書が必要です。
教材の改善については、タブレット・PC・電子黒板・テレビ会議システムなどのICTを活用することも取り組みの一環とされています。教室内の授業はもちろん、テレビ会議システムを使えば海外の学校とも意見交換や発表などの交流が出来、思考力・判断力・表現力などを育成することにつながるでしょう。
指導体制の強化
例えば、小学校で指導計画の作成と授業は学級担任、または英語担当教師が中心となって行うが、授業の内容はネイティブスピーカーや英語に堪能な地域の人々の協力を得たりして進めて行く、などより高度な英語力を持つ人材による指導体制の充実がはかられています。前述のALT(外国語指導助手)なども同様の取り組みです。
また、小学校教員が自信を持って指導に当たれるよう必要な研修を行ったり、英語免許の取得を推進したり、中・高等学校においては現職教員に対する研修を充実させたりすることも重要です。このような教員スキルの底上げはもちろん、授業体制も習熟度別、少人数制、チーム・ティーチングなどきめ細かな指導体制を行う環境の整備も求められています。
日本と海外の英語教育の比較
ここでは、日本と海外の英語教育を、比較的近いアジア圏と、遠いヨーロッパ圏の2つに分けて比較します。
アジア圏との比較
比較的近いアジア圏として、中国や韓国と日本の英語教育の違いを見てみましょう。実は、韓国では1997年から、中国では2001年から小学校での英語教育が必修化されています。いずれの国も小学校3年生から授業スタートとしていることから、日本では20年経ってようやく同じレベルに追いついたと言えるでしょう。
韓国では特にコミュニケーションツールとしての「使える」英語習得が重視されており、ディベートやプレゼンテーションなどを英語で行うこと、英語で自分の考えを発信することに力を入れた授業が行われています。ほかにも、英語だけを使って過ごす「英語体験センター」や「英語キャンプ」「英語フェスティバル」など、教室以外でも英語を使う機会を多くし、自然に英語に触れたり英語を使ったりする機会を増やしています。
中国でも多くは韓国と同じ小学3年生から授業スタートとしていますが、北京や上海など一部の都市部では小学1年生から英語の学習が始まります。こちらも英語を使ってとにかくどんどん「会話をする」ということに重点が置かれています。英語の間違いを指摘するよりも、「間違ってもいいから伝える」ことに焦点を当てているため、実用に耐える英語を身につけられるのが良いところです。
また、英語の学習時間自体の差も見逃せません。現在、小学校における英語の授業数は日本の小学校では教育改革後でも小学校3・4年で週に1コマ、小学校5・6年で週に2コマですが、中国では週4コマ以上、韓国では週3コマ以上です。また、英語を英語で教える「直接法」を取り入れていることも英語上達において重要なポイントと言えます。
ヨーロッパ圏との比較
ヨーロッパ圏では、オランダ・フィンランドと比較してみましょう。EUのデータによると、15歳以上のオランダ人の94%はバイリンガルであり、77%は3ヶ国語話者とされています。そんなオランダの英語教育開始年齢は、義務教育が始まる4〜5歳です。オランダでは教育の自由が保証されていることから、日本のような学習指導要領がなく、学校が自由に決められます。
指導方法や教材も学校に任されていることから、学校ごとにさまざまな工夫をこらして英語学習を行っているそうです。英語のポップスを見たり、YouTubeを見たりと、子どもの興味を引くような学習内容にすることで、楽しみながら英語を学習出来るほか、子どもが英語を好きになれるのです。
フィンランドでは、英語教育は中国や韓国と同じ小学校3年生から始まります。フィンランドでは入学試験がないという大きな特徴があり、他者と比べて評価したり順位をつけたりすることよりも、自分のために学習するという精神が根づいているためです。テストがないことで、間違いを恐れることなく英語を使えるのは、フィンランドの大きなメリットの一つでしょう。
間違いを指摘されて自信を無くしたり、テスト中心の学習を行う必要はないとはいえ、英語教員になるためには非常に高い英語力が求められます。フィンランドで英語教員になるためには、TOEIC945〜990点相当という非常に高いスキルが求められるため、質の高い英語教育を受けられるのです。
日本でも効果的な英語教育を受けるには
最後に、日本でも効果的な英語教育を受けるための3つのポイントを解説します。
学校以外に英語習得の時間を設ける
一説には、語学の習得には2,000〜3,000時間が必要とされています。英語教育改革が行われたとはいえ、それでも学校の学習時間は1130時間程度です。つまり、英語をマスターするためには学校の学習時間では圧倒的に足りません。そこで、学校以外に英語習得の時間を設け、英語の学習時間を補完すると良いでしょう。
コミュニケーションを念頭に置く
英語は単なる受験科目の一つではなく、言語であり、コミュニケーション方法の一つです。単純に英語の文法や単語を学べば良いのではなく、どんな場面で英語を使うかイメージしながら、音声学習やアウトプット重視の授業を行いましょう。政府の方針でご紹介した今後の英語教育においても、コミュニケーションを重視した方向にどんどん変わっていきます。英語を実際に使うということは、英語で会話や討論を行うことです。これらのことを念頭に置き、コミュニケーションを中心としたアウトプットの学習が求められるでしょう。
イマージョン教育を受ける
アジアの近隣諸国でも取り入れられている直接教授法(ダイレクトメソッド)で、英語で英語を学ぶことも重要です。我々日本語話者が日本語を学ぶのと同じように、ネイティブが英語を学ぶのと同じ方法で英語を学べるからです。また、英語だけを使う時間を設けることで、一度母語などほかの言語に訳する経路を使わず、英語のままで英語を理解する「英語脳」が育ちます。
「英語脳」を作るためには、英語を使って算数や音楽、体育などほかの教科を学ぶ「イマージョン教育」も有効だとされています。英語をわざわざ授業として学ぶのではなく、実生活の中で英語だけを使うことで、より実践的に、かつ学んでいるという意識なしに英語を身につけられるためです。
日本の英語教育も、今後はコミュニケーション中心に
日本の英語教育は、2020年の学習指導要領の改革を機に、これまでの文法や受験中心の学習から、コミュニケーション中心の学習へと大きく変化していこうとしています。人材不足や教材の変更、小・中・高の連携など課題はさまざまですが、グローバル化の流れの中、国際的に活躍出来る人材を育てるためには重要なことでしょう。
とはいえ、日本の英語教育は改革後も、海外と比べるとまだまだ遅れていると言わざるを得ません。日本にいながら効果的な英語教育のためには、早期教育で学習時間を確保するとともに、コミュニケーションに重点を置いた教育、英語をツールとして使うことに慣れるイマージョン教育が重要です。
明光キッズeなら、少人数の学童保育で1日最大5時間、英語漬けの時間を過ごせます。こだわりのおやつやオプションで食事の提供も可能で、学童保育に通いながら効率的に英語のイマージョン教育を受けられます。ぜひ、一度検討してみてはいかがでしょうか。
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